医療従事者と患者さんの上手なコミュニケーションとは?――骨髄線維症(MF)と上手につき合うために――
2024年11月30日開催 血液がんフォーラム2024(主催:キャンサーネットジャパン)のご講演より一部抜粋し再構成
血液がんの治療は、すぐに終わるものではなく、長い時間をかけて病気と向き合っていくことになります。治療を続ける中で、「もっと病気のことを知りたい」「気になる症状について聞いてみたい」「自分の希望を先生にうまく伝えられない」などと感じたことはありませんか?
ここでは、「骨髄増殖性腫瘍(MPN)(こつずいぞうしょくせいしゅよう)」の一つである「骨髄線維症(MF)(こつずいせんいしょう)」という病気について、2024年11月に実施した血液がんフォーラム2024で講演された内容も含めてわかりやすくご紹介するとともに、医療従事者とスムーズに話すためのコツや工夫についてもお伝えします。
「⾻髄増殖性腫瘍(MPN)」
とは
血液がんには主に、「骨髄系のがん」と「リンパ系のがん」があります。MPNは骨髄系のがんの一つで、血液を造るもととなる造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり、赤血球や白血球、血小板が過剰に造られる病気の総称です(図1)。
MPNにはいくつかのタイプがありますが、MFはその中でも、骨髄の中に線維質の物質がたまり、正常な血液が造られなくなる病気です。
図1 骨髄増殖性腫瘍(MPN)とは
「⾻髄線維症(MF)」の症状
と日常生活への影響
MFなどのMPNの症状として、白血球が増えることによって体内が慢性的な炎症状態となり、「だるさ」「かゆみ」「体重が減る」「微熱」などがみられます。また、血液を造る場所が骨髄以外(特に脾臓(ひぞう))に移ることで脾臓が腫れ、「お腹の張り」「少し食べただけですぐに満腹になる」「食欲が低下する」といった症状が現れることもあります(図2)。
さらにMFでは、骨髄の線維化が進むと白血球・赤血球・血小板などが造られにくくなります。そのため、貧血になることで「動悸(どうき)」「息切れ」「めまい」が起こったり、「疲れやすくなる」「手足に力が入らない」などの症状や、血小板が減少することで「出血が起こりやすい」「青あざができやすい」などの症状も現れることがあります1)。
こうした症状は外見からはわかりにくく、MFに特徴的なものでもないため、「年齢のせいかな」と見過ごされがちです。しかし、これらの症状は日常生活に大きな影響を与えるため、気になる症状があれば、医師等に相談するようにしましょう。
図2 骨髄線維症の症状
骨髄線維症では、脾臓の腫大や多彩な全身症状がみられる
現在の治療ゴールとコミュニケーションギャップ
MFは長くつき合っていく病気です。そのため、MFの治療では特に、病気の進行をゆるやかにして、患者さんにこれまでと変わらない生活をできるだけ長く送っていただくために、MFのさまざまな症状を和らげ、時には命に関わることもある血栓症や出血などの合併症を防ぐことが、治療の主な目標になります。
一方で、患者さんの多くは「病気を治したい」「進行を止めたい」という思いを持っています。このように、患者さんと医師との間で治療のゴールに関する考えに差があることが、最近の調査でも明らかになっています2, 3)。
では、なぜこのようなギャップが生まれるのでしょうか? 一つ考えられるのは、患者さんと医師のコミュニケーションを十分に取ることが難しい状況である可能性です。
もっとも、日本で行われた調査では、医師よりもむしろ患者さんのほうが「日々のコミュニケーションはうまくいっている」と感じているという結果でした3)。しかし、同じ言葉を使っていても、患者さんと医師とでは、そこに込められた意味が異なることがしばしばあります。
また、短い診察時間の中では、患者さんが自分の思いや不安をゆっくり話すのが難しいこともあるでしょう。こうしたすれ違いが、治療のゴールに対する考え方のギャップにつながっている可能性があります。
参考文献
1)赤司 浩一 他: 骨髄線維症診療の参照ガイド第7版 令和7年度
2) Harrison CN. et al.: Ann Hematol. 96(10), 1653-1665, 2017
3) Edahiro Y. et al.: Hematology. 28(1), 2227817, 2023
コミュニケーションをうまく
とるための3つのポイント
ここからは、患者さんが医療従事者と良好なコミュニケーションをとり、考え方のギャップを埋めるために、患者さん側で工夫できるポイントを3つご紹介します。
① 症状を知る
MFにはどんな症状があるのかを知り、自分が感じている症状がMFによるものかどうかを確認してみましょう。
② 症状を記録する
「疲れやすい」「かゆい」「お腹が張る」など、毎日の体調を簡単に記録しておくと、診察のときに先生へ端的に伝えやすくなります。
③ 相談できる人を増やす
先生に直接話しにくい場合は、看護師や薬剤師など、医師以外の医療従事者に相談してみてください。必要に応じて、がん相談支援センターを利用したり、患者会に参加したりするのも一つの方法です。
伝えるために必要な記録する力
日によって体調が変わることもあるため、「いつからその症状が出たのか」「どのくらい困っているか」を伝えるのが難しい場合もあります。そんなときには、いつ・どんな症状があったのかを記録しておくと、診察の際に相談しやすくなります。
症状の記録に特化した『症状チェックダイアリー』などのツールもありますので、必要に応じて活用してみてください。『症状チェックダイアリー』には、MFによくみられる症状がリストアップされており、何がMFの症状なのかがわかるだけでなく、各症状の変化や、その症状によってどの程度困っているのかも記録できます(図3)。このダイアリーを診察時に見せることで、医師が症状の変化を正確に把握しやすくなり、あなたに合った治療の提案につながる可能性があります。
図3 症状チェックダイアリー
「なんとなく不調」「言いにくいけど気になっていることがある」――こうした小さな声が、治療のカギになることもあります。症状を記録しておくことで、自分の体と向き合い、医療従事者とつながる手がかりにもなります。自分に合った治療で、自分らしく過ごしていくために、日々の症状だけでなく、疑問や不安、伝えたいことがあれば記録し、医療従事者にご相談ください。
なお、ご紹介した『症状チェックダイアリー』のPDFはこちらからダウンロードできます。